構造計算偽造事件の再発を防ぐために考え出された、「構造設計適合判定機関」という法律的仕組が出来始めています。
偽造が発覚して1年以上が過ぎましたが、この時点で防止策の法律が出来始めていることの早さには驚いています。
国も建築物の骨組の構造設計に関して、その重要性を認識し始めたのだと思います。
意匠設計者の下請のような存在として、骨組の安全を確保することが構造設計者の仕事だと思い込まされて来たように思います。
意匠設計の可能性をバックアップすることに柔順であり、安価な設計料で早く仕事の出来る構造設計者が良い「構造屋」だと言われて来ました。
このような「構造屋」と言われる関係で、無理を強いられてもよほどの信念と力を持っていない限り、仕事を引き受けざるを得ないのが今も続いている状況と言えるでしょう。
構造設計者というより、構造設計により確認申請が出来、それなりに施工が出来れば良いだけの、単なる道具に過ぎない存在がおそらく今も大半を占めていると思っています。
このような状況の中で偽造事件が起きた訳です。
この状況が直接的な原因であれば、もっと多数の偽造事件が起きてもおかしくない事ですが、構造設計という仕事柄からか比較的に生真面目な性格の人の多いことから救われてきたように思います。
しかし、事件化したトラブルの他にも多くの類似トラブルが発生しているのが現実と思われます。
それらの根本的な原因と思われるのは、構造設計者が社会的に誇りを持てなかったということであり、これは重大な事だと思っています。
この事が勉強をしたり向上する意欲を持てず、良心を支える心も弱まってしまうことになると思うのです。
これが多くの問題を生んでいると思っているのです。
今回の「構造計算適合判定機関」の設置によって、建築構造設計が上質に変わるかどうかは?ですが、決め事通りにいわゆる「ピアチェック」を行おうという仕組です。
建築確認申請に合わせて「構造計算適合判定機関」への審査が義務付けられ、費用も期間も増加することは当然ながら発生します。
ピアチェックとは「仲間による検討」をしようということです。
しかし、その仲間というのは今まで構造設計をして来た同業仲間であり、何んにも変わらない者同士が専業的に検討しようということです。
ただ決まり事すなわちチェックポイントを法的に決め建築行政的に行うということです。
「構造計算適合判定機関」の設置とは別に「構造設計一級建築士」が設けられる見込みも出て来ています。
この資格者でなければ一定規模以上の建築物の構造設計をすることが出来ないというものです。
この資格を設けることには関連する多くの問題を含んでおり、大変な法改正になると思っています。
一例をあげるならば企業や役所の組織の中で、人事異動や希望転向などの場合はどんなことになるでしょうか。
施工や監理の構造分野で構造設計の内容を理解できる技術者の対応はどうするのでしょうか。
そして、構造設計者の今後は・・・?