さて、みなさんに問題です!

「東京には、上り坂と下り坂。どちらが多いでしょうか?」

この前、講義でこんな質問をしたら、学生からは「のぼりざかー!」と元気のよい声があがりました。

が、……同じ坂道なので、「上り坂」も「下り坂」も、当然同じ数になります。

でも、上りの方が気持ちのいい坂と、下りの方の気持ちのいい坂があることは、読売理工の周りを歩いていると、すぐに理解できます。

読売理工の校舎は、本郷台地目白台地という高台の間の谷筋に建っています。なので、東に行っても、西に行っても、坂は上りになっています。

校舎の南側を東西に走る四車線道路である春日通も、同じように坂道になっていますが、交通量が多くて風情がありません。でも、ちょっと横にそれると、ちょっと素敵な坂道がたくさんあります。

今回紹介するステキな坂道

まず、東に行ってみましょう。例えば、500m歩くと菊坂があります。昔ながらの商店街で、樋口一葉が通った伊勢屋質店(文京区指定文化財)があり、伝統的な商店や古い喫茶店が残っていて、歩いていて楽しい庶民的な坂道です。風情のあるお宅もあって、少しなつかしい気持ちになるかもしれません。菊坂は上って行くとき、わくわくする坂道です。先日の建築学科の授業で「まちあるき」としてこの辺りを散策しました。

菊坂(伊勢屋質店の前、1年生建築概論にて)

では、下の写真にある、菊坂の南側にあるこの坂はどうでしょうか?
炭団坂という名前がついています。
炭団は練炭と同じような昔の燃料のことです。あまりに坂が急なので転がってしてまい、真っ黒になってしまうという意味で名づけられたのです。崖にはいつくばっていて、階段になっているので上るのは大変です。
でも、上から見るときれいな風景が広がっています!美しくデザインされているのも注目です!(建築を学んでいるとこのようなデザイン計画を一度は立ててみたいものです。)
なので、ここは下る方が気持ちいい坂道でしょう。

では、今度は、西に行ってみましょう。校舎から500m離れたところに、善光寺坂があります。この坂は200mぐらいの長さのゆったりした坂です。

樹齢400年のムクの大木(文京区指定天然記念物)や、善光寺や稲荷大明神、慈眼院などはじめとする寺院建築を見ながら、散歩する事が出来ます。これらの寺院には、面白い形をした江戸時代の建築があり、興味をそそります。

そして、建物の高さも低いので、景色を守ろうという気持ちが、まちから感じられます。

ちなみに、タレントのタモリさんも、著書『TOKYO坂道美学入門』で絶賛している坂だったりします!

このように考えると、建築を学んだり、まちを体験してみたりすると、「上り坂」と「下り坂」があって、それぞれ受ける印象に違いがあることや、それぞれの坂に個性があることがわかります。

みなさんも、読売理工の建築学生になったら、放課後に近所を歩いたり、
設計課題の敷地を調べに行くことになります。
道路は建築設計を行う上で重要な要素になります。
みなさんが見ている坂は、もう単に「坂」ではありません。
「上り坂」でしょうか「下り坂」でしょうか、感じ取ってみてください。