印刷について知る上で、紙の話は欠かせません。
日本の紙・・・といえば和紙です。
諸外国の紙は、厚手で脆いけど、和紙は繊細で丈夫です。
紙の材料は、楮(こうぞ)や三椏(みつまた)といった植物。
これらの繊維だけを取り出して、細かく砕いて水に浸し、
それにトロロアオイを加えて攪拌(かくはん)して準備完了
西洋に多く見られる紙は「タメスキ」といって、
枠に攪拌した水を流し込むだけといった簡単な方法。
とはいえ、紙の厚さが均等になるようにしないといけないから、
流し込み方によっては、漉きむらができてしまう
水分がある程度流れきったのを見計らって、
紙を板に移したら、後は乾くのを待つだけ・・・で完成。
日本の和紙は「ナガシスキ」といって、
枠を攪拌した水の中につけて掬い上げたら、
枠を水面ぎりぎりに保ちながら前後に動かす。
すると、枠の中で紙の繊維が絡み合い、平たくなっていく。
水につけては枠を揺らす・・・これを繰り返して欲しい厚さの紙にする。
漉きあがったら、そのまま板に移して乾かす。
西洋の紙は乾かすとき重ねられないけど、和紙は重ねて乾かす。
作り方を見て解る通り、西洋の紙の方が材料が多く必要になる。
日本は、紙の材料が豊富ではなかったから、
少ない材料で多くの紙を得るために「ナガシスキ」を考え出した。
繊維が絡んでいるから、重ねて乾かしても乾けば1枚ずつ取り出せる。
実家で縦長の和紙があったけど、
確かに薄くて繊細で、軽くくっついてて、
ぺりぺりはがすと、しなやかなで薄い和紙が取り出せた。
浮世絵(錦絵)は、色の数だけ木の板を用意して重ね刷りしたもの。
印刷で言うところの凸版印刷・多色刷り。難しそうで身近でしょ?
普段使う紙は機械で漉いたものだけど、紙を漉く原理は一緒。
目的や用途によって、使う紙も変われば印刷の方法も変わる。
その印刷は
じっくり読ませるためのものなのか?
何かをお知らせするものなのか?
記録として残しておくものなのか?
それによって紙も変わる。
色がついた紙、透かしが入っている紙、つやつやした紙、
頑丈な紙、手で簡単に裂ける紙・・・いろいろ。
新聞紙が明らかに上質でない理由は、
新聞は1日経てば古新聞、その日限りのものだから。
でもそれだけではない。
情報がいっぱいつめるためには、文字の数が増えてしまう。
文字が多いと、真っ白な紙だと目が疲れてしまう。
だから、ねずみ色の丈夫な紙に印刷されている。
文庫本や、新書本や、上製本も、
文章を読む本の紙は、決して真っ白な紙じゃない。
今度本屋さんに行ったら、紙にもちょっと注目してみて下さい。
紙と文字と技術のコラボレーション、それが印刷物なのです