【人工知能(AI)その1】AIとトランジスタ

2019年3月12日の読売新聞に、「未来明るくするAI進化を」という江崎玲於奈先生の解説記事が掲載されました。

AIの第一次ブームは60年前くらい、そして第二次ブームは30年前くらいになります。
そして今、数年前から第三次ブームが始まっています。

第一次ブームと第二次ブームが終息した理由は、当時のコンピュータ・アーキテクチャとトランジスタ技術の発展にあったと言えるかもしれません。
コンピュータ・アーキテクチャとはコンピュータの設計思想のことで、Principle of operation(動作原理)に基づいて仕様が細かく決められており、トランジスタなどを集積して作られている電子回路の入出力について定義をしています。

CISC系の汎用型コンピュータ・アーキテクチャとバイポーラ・トランジスタ技術を利用したコンピュータ製品が世の中に出てきたのが、第一次ブームの終わり頃です。
そして、RISC系の並列処理型コンピュータ・アーキテクチャとCMOSトランジスタ技術を利用したコンピュータ製品が登場したのが、第二次ブームの終わり頃です。

一見すると壁にぶちあたってブームが去ったように見える第一次ブームと第二次ブームですが、新技術の登場により、その新技術を応用した研究結果が次のブームにつながっていると見ることもできます。

AIの技術はコンピュータグラフィックス(CG)技術の発展と同期しているように見え、その背景にあるのは全世界的なスマホの普及と言えます。
元々は60年前くらいのコンピュータに使われているバイポーラ・トランジスタ技術と、関連する様々な技術が発展、融合した結果が、現在のAIであるということができます。
そして、そのバイポーラ・トランジスタについて学ぶのが電子回路の授業です。
電子回路で作るパルスを電子データ、デジタル情報として取扱い、処理をするのがデジタル回路です。
その延長上にあるのがデータ通信の世界で、更にIoTへとつながっているのです。
電気電子学科では電気工事や電気エネルギーだけではなく、こういったことも学ぶことができます。

AIによって仕事が無くなると言われていますが、AIは決して得たいの知れないものではなく、人類が開発したデジタル回路上で、専門家によって選択、加工して与えられたデジタル情報を入力して、機械学習により分別力を向上させているに過ぎません。
AIの分別力による判断結果は機械的なものであり、決して見識の高いものとは言いきれず、最終的な判断は専門家の手によらなければいけないと考えられます。

江崎先生は30年前に本学院(学校法人読売理工学院)の特別顧問に就任頂き、入学式で記念講演頂いたというご縁がございます。
そして30年前のその頃、現場を走り回っていた私が勤務していた日本企業の非常勤取締役で、米国本社の研究所のフェローという、雲の上の世界の大先輩です。
これを機会に、AIについて色々と書いていこうと思います。