【実践力講座2】再発防止対策の3要件

 再発防止策の徹底が原因かもしれない痛ましい事故を時々ニュースで目にします。しかし、たとえ再発防止策が徹底されていても、事故が再発してしまうことがあります。その原因は立案された再発防止策が必要な要件を満たしていない場合です。

 再発防止策に必要とされる要件は3つあります。第一に適中性、第二に永続性、第三に具体性です。1番目の適中性とは、再発防止策が事故の真の原因に焦点が合っていることです。2番目の永続性とは、再発防止策が応急的な措置ではなく、関係者に変更があった場合でも、いつまでも効果を有することです。3番目の具体性とは、再発防止策が精神論ではなく、該当作業が実施される現場で、具体的に作業手順の中に反映されることです。

 これまでの経験では、事故が発生してしまったときには、下請負業者の営業責任者が発注者を早急に訪ねて、事故発生の経緯を説明し、再発防止策を提示して、「申し訳ありませんでした。今後は事故を再発させないように頑張ります。」と言うのですが、頑張るという精神論だけでは残念ながら事故を防ぐことはできません。

 事故を確実に防ぐためには、再発防止策が的中性、永続性、具体性を満足することが必要です。それらを満足する再発防止策を立案するためには、事故発生に関係している現場の当事者の参加が不可欠です。決して悪者探しや非難をするためではありません。適中性を向上させるために、事実の確認を徹底的に実施するためです。大部分の事故原因はヒューマンエラーです。当事者のそのときの体調や精神状態、現場環境なども重要な事実になります。

 事実を徹底的に確認した上で、事故原因の分析を実施します。集めた多くの事実を、事故発生に直接影響を与えた直接原因と、その他の間接原因に分類し、更にそれらの原因の因果関係を明らかにします。人的原因、物的原因、管理的原因を特定して、それらに個別に対応する対策を組み合わせることで、適中性を満足することができるのです。

 そして、再発防止策の実施段階では、いつ、誰が、何に着眼して点検をするのかということが具体的に必要です。そうすることが永続性の満足につながります。

 そのためには、再発防止策を具体的な作業に分解して、作業手順の中に取り込む必要があります。そうすることで、具体性を満足することも可能になります。

 従って、再発防止策はお詫びのための作文であってはなりません。二度と同じ事故は発生させないという固い決意を持った当事者仲間が集まり、3要件を満たした再発防止策を立案した経験者の進行に従って、時間を費やして検討することが必要です。こういった段階を踏んで再発防止策を立案するためには、最低でも12時間程度は必要です。

 また、こういった作業を進めるためには、学生時代に友人たちと色々なことを語り合い、許しあえる経験をすることが大変重要です。本校の電気電子学科に集まってくる学生たちには、そういう経験を沢山して卒業して欲しいと願っています。