電気主任技術者の将来【電気系資格その7】

再エネ電力会社や工場、ビルなどの電気工作物の保安監督を行える電気主任技術者(電験)有資格者は、第二種、第三種ともに、中長期的にも想定需要に対して十分に存在していると経済産業省は発表しています。

しかし、電験第二種については、想定需要に対して約4倍の有資格者が存在しているとされているにもかかわらず、今後の再エネ設備の全国各地での増加に伴い、地域によっては確保が難しくなるだろうと考えられています。

電験第三種についても、有資格者は充足しているという結果になっていますが、業務ビルから保安監督業務を受託している保安法人(業務受託企業)では、2020年頃から人材不足が始まり、25年後の2045年には想定需要約18,000人に対して3900人が不足することになるというモデル分析結果が出ています。

電験三種の有資格者不足の要因のひとつとしては、保安監督業務を委託する業務ビルが増加する一方で、電験認定取得が可能な新卒入職者数が減少することが想定されています。

全国的には十分な有資格者が存在しているにもかかわらず、地域や業種によっては、まだまだ有資格者が必要とされ続けるのが、電気主任技術者(電験)の将来展望であるといえます。

電気主任技術者【電気系資格その6】

denken電気主任技術者とは事業用電気工作物の保安監督のために配置することが電気事業法で定められています。
事業用電気工作物とは、発電所、送配電設備、受電設備などのことです。

「〇〇業法」というのは、その事業に対して必要な規制を行い、その事業のお客様を保護するのが一般的です。
しかし、電気事業法は受電設備の所有者であるお客様に対しても、電気主任技術者の選任を義務付けています。
つまり、電気事業法では事業者とお客様が一体となって、全ての電気工作物の保安を確保しているといえます。

電気主任技術者資格には第一種、第二種、第三種があり、その技術レベルに応じて、対応可能な設備(電気工作物)の規模が定められています。

第三種電気主任技術者(電験第三種)には、出力5,000kW以上の発電所を除く、電圧50,000V未満の事業用電気工作物の工事、維持および運用の保安監督が認められています。

第二種電気主任技術者(電験第二種)には、電圧170,000V未満の事業用電気工作物の工事、維持および運用の保安監督が認められています。

第一種電気主任技術者(電験第一種)には、全ての事業用電気工作物の工事、維持および運用の保安監督が認められています。

これらの他、第一種電気工事士には許可主任技術者として、常駐地の最大電力が500kW未満の自家用電気工作物の工事、維持および運用の保安監督が許可される制度があります。

一般用電気工作物【初学者の電気法規1】
http://blog.livedoor.jp/yomiuri_denki/archives/52299049.html

自家用電気工作物【初学者の電気法規2】
http://blog.livedoor.jp/yomiuri_denki/archives/52299097.html

許可主任技術者【電気系資格その4】
http://blog.livedoor.jp/yomiuri_denki/archives/52299448.html

第39回学園祭 テーマは”サイバーパンク”

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今週末、2018年10月27日(土)と28日(日)に、第39回学園祭 ”YOMIULINK FESTIVAL”が行われます。

電気電子学科ではいつも電気工事実習などを行っている3階301教室で、電気工事の展示・体験を行います。
そのついでに毎年恒例のちょっとしたゲームコーナーも用意します。
シーケンス工事05

301教室には1年生と2年生の学生がいるので、展示の内容や、ゲームコーナーの楽しみ方が分からなければ、気軽に声をかけてください。
5階の503教室では、他の学科の模擬店と一緒に、電気電子学科の学生がポテトを販売しています。

学園祭の企画、運営は他の学科の学生と協力して、全校の学生で行っていますが、電気電子学科の1年生が副実行委員長として企画段階から頑張っています。
そして、実行委員以外の電気電子学科の学生も、副実行委員長からのお願いで、準備作業に緊急で参加をして、一緒に頑張っています。
今回の学園祭のテーマ ”サイバーパンク” も副実行委員長の提案が採用されました。
この学園祭で多くの楽しい思い出を作って欲しいと思っています。

これからの進路を考えている中学生や高校生の皆さんには、ぜひ見に来て欲しいと願っています。
自分でもこんなことができるんだということに気づいて、これからの進路検討の参考にしてもらえると嬉しいです。

10月27日(土),28日(日)学園祭「YOMIULINK FESTIVAL」開催! | 読売理工医療福祉専門学校

https://www.yomiuririkou.ac.jp/news/2018/20181011.html

電気工作物の保安【初学者の電気法規4】

790480df8ff7648f752ddc2be354cb51_s電気事業法など、電気法規の目的は電気工作物の保安の確保です。
全国の発電所から一般家庭までを送電線や配電線で接続しているということは、全国がひとつの電気回路になっているということです。
実際は地域ごとに分かれている電源周波数50ヘルツまたは60ヘルツの交流回路が、同じ周波数の交流または直流で接続された、複数の交流回路で構成される大きな電気回路です。
従って、どこか一ヶ所で大きな事故が発生した場合には、多大な影響を与える可能性は否定できないのです。

一ヶ所で発生した電気工作物の事故が原因となって、広範囲の停電が発生しないように、様々な対策が多くの場所で行われていますが、電気事故が発生しないように、それぞれの責任範囲で安全状態を確保するために管理を行うことが重要です。
これが電気工作物の保安を確保するための管理です。

一般用電気工作物と、最大電力500キロワット未満の自家用電気工作物は、電気工事士制度によって電気工事の欠陥による災害発生の防止を行い、電気工作物の保安を確保しています。

電気工事士の工事が認められていない電気工作物は、電気主任技術者が電気法規や保安規程などに従って管理を行い、保安を確保しています。
事業用電気工作物の保安監督業務は、規模と業務の種別によって、許可主任技術者、ダム水路主任技術者、ボイラー・タービン主任技術者にも認めて、保安管理体制を維持するようにしているのです。

許可主任技術者【電気系資格その4】
http://blog.livedoor.jp/yomiuri_denki/archives/52299448.html

うわば、したば 【工事業界の専門用語その5】

_ABC0281_s「上端」と書いて「うわば」、「下端」と書いて「したば」と読みます。

日常生活では「じょうたん」や「げたん」と読んでも間違いではありませんが、
工事の現場では「うわば」や「したば」と読みます。

電気設備工事の場合には、壁面に設置されている盤や、器具などの上端の高さを指して、「うわば」と説明をしたりしています。

設備設計者との打ち合わせのときには、「上端(うわば)」の他に、同じ意味で「天端(てんば)」が使われることもあります。

電気工事士の将来【電気系資格その5】

denki1第一種電気工事士は2年後の2020年には、高齢者層の退職により約18,000人が不足する見込みです。
更にその25年後、2045年には電気工事完工高の減少を考慮しても、想定需要約165,000人に対して24,000人が不足するという現状分析が経済産業省の電力安全小委員会で報告されています。

第一種電気工事士の有資格者は、50歳以上が全体の60%を占め、そのうち50代だけで全体の36%です。
昭和63年の電気工事士法改正のときに、旧制度の電気工事士から第一種電気工事士に移行した、当時26歳前後の有資格者が多くなっています。

この第一種電気工事士の不足を補うことになると想定されているのが、認定電気工事従事者です。

第二種電気工事士には大量退職はありませんが、少子化などによって電気工事業界への就職者(入職者)が減るため、2020年には6,000人が不足、2045年には想定需要約88,000人に対して2,500人が不足する見込みです。

しかし、第二種電気工事士は認定電気工事従事者として第一種電気工事士の不足を補うことになるので、一般電気工作物の工事を行う第二種電気工事士の不足は更に拡大することが想定されています。

電気工事士全体としては、2020年には24,000人、2045年には26,500人に不足数は拡大していきます。

AIやロボットによって作業の効率化は進んでいくことが考えられますが、図面から作業内容を判断して、身に着けた技能を発揮する場で働く電気工事士は年々不足していきます。
AIによって多くの仕事が無くなると言われていますが、電気工事士はこれから益々必要とされていくと言えるでしょう。

低圧と高圧【初学者の電気法規3】

denki2低圧で受電をするのは一般用電気工作物、高圧で受電すると自家用電気工作物。

低圧と高圧の電圧についても電気法規で定められています。
スマホの充電などで、いつもコンセントに接続することで使っている、交流電源は次のとおりです。

低 圧:交流600V 以下のもの 
高 圧:交流600V をこえ7,000V 以下のもの

電柱の一番上を走っている3本の電線が6,600Vの高圧、その下の電線が200Vと100Vの低圧というのが一般的です。
電柱の一番上の電線と、下の電線の間には、変圧器が固定されていて、6,600Vの高圧を、200Vや100Vの低圧に変圧しています。
一軒家の住宅や、住宅付店舗では、電柱の変圧器で低圧にした電力をそのまま使っています。

ビルやマンションの自家用電気工作物の場合は、直接6,600Vなどの高圧で受電して、建物内や敷地内に設置している変電設備(変圧器)で200Vや100Vの低圧に変圧して使っているのです。

後から来る塩害【現場のなぜ?その3】

electricalworker台風24号が通過したのは9月30日から10月1日まででしたが、塩害による電柱や電線から火花が出たという報告は翌日の2日の夜からでした。

台風の強風によって海水が運ばれて付着した塩分が、電解質として霧や小雨に溶けることにより、通常より導電率が高くなった水分の中を漏れ電流が流れます。
導電率が高くなるということは、電気抵抗が低くなることなので、いつもの霧や小雨よりも電流を流しやすくなります。

電気抵抗に電流が流れると発熱し、その熱によって水分は蒸発し乾燥します。
その乾燥した部分の両端の水分には高電圧がかかったままなので、この乾燥部分で火花放電が発生すると考えられています。

火花放電が発生する条件として、霧や小雨といった少量の水分と、その水分を蒸発、乾燥させる時間が必要になります。
そのため、電気設備の塩害による影響は後から出てくるのです。

気象庁のデータによると、宮崎では9月30日16時に0.5mmの降水量記録を最後に雨は止みました。
その後は10月3日の21時に0.5mm未満の降水量が記録され、10月4日の朝6時まで降水量が記録されています。
宮崎ではその後も断続的に雨が降り、4日18時頃から1時間20分程度、JR日豊線と宮崎空港線の一部区間で大規模停電による運行トラブルが発生しました。

千葉では10月1日3時に0.5mmの降水量を記録した後に雨は止み、10月4日13時の0.5mm未満の記録から断続的に降水量が記録され始めています。
翌朝の5日7時45分頃には千葉市の京成線西登戸駅で停電が発生。京成電鉄では9時半までに他の駅3か所でも電線からの火花を確認したため、19時50分頃まで全線で運転を見合わせ、電気設備の点検を行いました。

降水量の記録開始から、実影響までの時間差から考えると、10月2日に電柱や電線から火花が出たのは、前日まで続いた台風による大雨の水分による影響の可能性が疑われます。

塩害停電対策【現場のなぜ?その2】
http://blog.livedoor.jp/yomiuri_denki/preview/edit/24200138265d80c9dfe6795a5c4a1206

よびせん 【工事業界の専門用語その4】

「よびせん」は「呼び線」と書きます。
「予備線」ではなく「呼び線」、「呼び線そう入器」の「呼び線」です。

新築工事などで建物の壁の中に電線用配管を埋めるとき、配管工事の担当業者さんから「よびせんはどうしますか?」と尋ねられることがあります。
尋ねて下さる業者さんは良心的なほうで、配管のお願いをするときに一緒にお願いをするのが常識ともいえます。

呼び線の片側へ配線(通線)する電線を固定して、固定した逆側の配管出口から呼び線を引っ張ることで、引っ張る方向へ電線を呼ぶことができます。
だから「呼び線」です。

配管はCD管を使うことが多く、コンクリート打設前に配管をきちんと固定しますが、OA床(フリーアクセスフロア)の床パネル下の有効スペースなどに横方向から出てくる場合に、何らかの原因によりコンクリート打設後に移動してしまうこともあります。
そのときには配管配線図面を参考に、逆側から呼び線を出し入れしてみることで、探してみるという方法もあるので、呼び線は入れておくのが良いと思います。
ある新築工事では、配管出口が10メートル程度移動していたこともありました。

呼び線を入れる作業からすれば、後から配線(通線)する電線用の予備として入れる線なので「予備線」と言いたい気持ちは理解できますが、「予備線」ではなく「呼び線」が正解です。

現場を経験せずに第二種電気工事士の勉強をしたときに、「呼び線そう入器」の写真を見ただけでは使い方が想像できないかもしれませんが、呼び線の入っていない配管の場合には、呼び線そう入器のスチールを回転させながら配管に入れて行き、配管の逆側に出たら電線を固定して、巻き戻しながら配管に入れたスチールを手前に引くことで、配線(通線)作業を行います。

許可主任技術者【電気系資格その4】

許可主任技術者とは申請により許可された場合に、電気工事士免状取得者が特定の自家用電気工作物の電気主任技術者になることです。

特定の自家用電気工作物に限られる理由は、選任許可申請をする電気工事士免状取得者が、許可を受ける自家用電気工作物があるビルや構内に常駐していなければならないからです。

第一種電気工事士免状取得者は最大電力が500kW未満の自家用電気工作物、第二種電気工事士免状取得者は最大電力が100kW未満の自家用電気工作物の、許可主任技術者として選任許可申請をすることができます。