塩害停電対策【現場のなぜ?その2】

送配電線路(送電線・配電線の設備)や屋外変電所の碍子(がいし)に付着した塩分が霧や小雨に溶けることにより、その塩分を含んだ水を流れる漏れ電流が塩害発生の原因と考えられています。
塩分を含んだ水の電気抵抗は、一般的な雨水や水道水の100分の1程度になります。
電気抵抗が小さくなれば、碍子表面の漏れ電流は流れやすくなり、電流の増加によって発熱量は増加します。
その発熱によって碍子表面が乾燥し、部分放電が発生したり、フラッシオーバーに移行することによって事故が発生し、停電を引き起こします。

空気中の塩分量は風速の2乗で増加するという研究結果もあり、風速10m/s以上の海風が吹くときには、沿岸部の各種構造物などへの塩分付着量が急増するとされています。

それでは、なぜ沿岸部では塩害による停電が少ないのでしょうか。
それは、塩害の発生が考えられるところでは、塩害対策が既に講じられているからです。

塩分付着量は海岸から離れるに従って減少するという分析結果があり、停電事故を防止できる最適な碍子の選定と配置を電力会社は進めているのです。

今回の平成30年台風24号では関東地方でも非常に強い風が吹き、最大風速と最大瞬間風速の観測史上1位の値を更新した地点が複数あります。
台風通過前に太平洋から吹き込んだ強い南風は、これまで塩害対策を施す必要がなかった海岸から離れた地域まで、大量の塩分を運んで塩害発生に至る量の塩分付着を引き起こしたようです。

塩害対策については、第二種電気主任技術者試験(電験第二種)では2006年度、第三種電気主任技術者試験(電験第三種)では2008年度や2015年度などに出題されています。

電気室の配置【現場のなぜ?その1】

電気室が浸水したというニュースがありました。

一般的に「キュービクル」と呼ばれる、キュービクル型受変電装置は屋上などに設置され、浸水することは普通考えられないのですが、なぜ電気室は浸水するのでしょうか。

建物の規模にもよりますが、受電条件や、建物内への配電系統、接続されるその他の設備などの制約条件により、キュービクルに簡素化して収容されている機器では対応が難しいときには、建物内に電気室を作って、電気室内に受電設備機器や、配電するために電圧を下げる変電設備機器などを個別に設置して、電力会社から供給される電力を建物内(構内)で使用できるようにします。

電気室を配置するときに考慮するのは次の点です。
①電力会社から引き込むことが容易なこと
②電気室に設置する機器の搬出入が可能なこと
③電気室に設置する機器の保守スペースや拡張スペースを確保すること
④電気室に設置する機器の重量に床の耐荷重が耐えられること
⑤接続されるその他の設備(非常用発電機や空調設備など)に近いこと

⑤の非常用発電機や空調設備なども、②~④は一緒のため、これらの電気室や発電機室、空調機械室などは地下に隣接して作られることが多いのですが、現在では洪水などによる浸水対策を講じることが一般的となっています。
しかし残念なことに、配置計画や設計段階で想定できない洪水になったときには浸水してしまっているというのが現実のようです。

認定電気工事従事者【電気系資格その3】

認定電気工事従事者とは第一種電気工事士でなくても自家用電気工作物の簡易電気工事作業に従事ができるという資格です。
具体的には、最大電力500kW未満の需要設備(「自家用電気工作物」という)のうち、電圧600V以下で使用する電気工作物の工事(電線路に係るものを除く)が認められています。

次の3者は申請のみで認定証を取得することができます。
①第一種電気工事士試験合格者
②第二種電気工事士免状取得後、電気に関する工事の実務経験が3年以上ある者
③電気主任技術者免状取得後、電気工作物の工事、維持もしくは運用に関する実務経験が3年以上ある者

第二種電気工事士の資格を取得して就職したときに現実的に問題となるのが、お客様の現場は自家用電気工作物なのに、第二種電気工事士は一般用電気工作物しか工事が許可されていないということです。

そのため、次の2者は電気工事技術講習センターが実施する「認定電気工事従事者認定講習」を受講し、その講習修了証等を添えて申請することで、認定証を取得することができるようになっています。
①第二種電気工事士免状の交付を受けた者
②電気主任技術者免状の交付を受けた者

認定電気工事従事者の認定証取得は、電気工事士免状取得者以外に、電気主任技術者免状取得者にも認めれています。

取得方法が似ているものに特種電気工事資格者があります。

特種電気工事資格者でなければ、ネオン工事と非常用予備発電装置工事(自家用電気工作物の保安上支障がないと認められる作業であつて、経済産業省令で定めるものを除く。)に従事できません。

ネオン工事の特種電気工事資格者も、非常用予備発電装置工事の特種電気工事資格者も、認定講習の受講と5年以上の工事の実務経験が必要です。
特種電気工事資格者認定講習の受講資格は、電気工事士免状取得者のみです。

自家用電気工作物【初学者の電気法規2】

自家用電気工作物とは、電気事業用の電気工作物以外の事業用電気工作物です。
一般用電気工作物は、電気事業用の電気工作物から、低圧で受電しています。
自家用電気工作物は、電気事業用の電気工作物から、高圧や特別高圧で受電しています。

一般用電気工作物、自家用電気工作物、電気事業用の電気工作物と区分されていますが、
全ての電気工作物は変電設備や送電線、配電線でつながっています。

自家用電気工作物の設置者は、保安規程を作成して、電気主任技術者を選任し、電気の保安を確保することが法律で義務付けられています。
この電気主任技術者に選任される前提となる国家資格が、電験と呼ばれている電気主任技術者試験の合格者です。

電気主任技術者の資格は、第一種、第二種、第三種に分かれており、その種別によって電気法規で許可されている電気工作物の規模が異なります。

電気主任技術者は電気工事士と共に、電気法規に従って電気工作物の安全に責任を持つ仕事です。