1年生の電気工事実習 ~はじめての金属管工事~

電気工事士は、今から52年前(昭和35年)の10月に施行された「電気工事士法」で、その独占業務と業務遂行に伴う責任や義務が定められています。

電気工事士法第3条各項では、有する電気工事士「免状」や「認定証」の種類に応じて、従事が可能な電気工事が明確に定められています。
つまり、医師や弁護士の資格が無ければその業務ができないように、電気工事もその工事内容に応じた電気工事士「免状」や「認定証」が無ければ業務に従事することが法律で禁止されています。

「第二種電気工事士免状」については、電気工事士法第4条4項で、免状取得方法として3つの方法が示されています。
それは、

①  第二種電気工事士試験に合格した者
 経済産業大臣が指定する養成施設において、経済産業省令で定める第二種電気工事士たるに必要な知識及び技能に関する課程を修了した者
③  経済産業省令で定めるところにより、②に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有していると都道府県知事が認定した者
です。「第二種電気工事士免状」は、この①~③のどれかに該当しなければ取得することができません。

受験制限も無く、広く一般に免状取得の機会が与えらえているのが、年2回実施されている①による方法です。
この試験は全国で毎年約10万人が受験申込をしています。

この学校の電気電子学科(定員40名)の卒業生は、②の経済産業大臣が指定する養成施設を修了した者として認められます。つまり、卒業と同時に国家試験合格者と同等の能力を備えていることが認められるのです。

年間10万人の受験者が筆記試験に合格することで、その受験が許される技能試験は、電気工事士の業務遂行に必要な最低限な技能を修得しているかどうかをサンプリング的に確認している試験といえます。

実際の電気工事の現場では、技能試験に合格しただけでは対応できない様々な作業が存在します。
その点、養成施設となっている専門学校では2年間の電気工事実習で、現場の即戦力となるために必要な様々な作業についても、2年間の電気工事実習で学生たちに実際に体験して身につけることができるように、体系化されたカリキュラムに基づいて授業を行っています。

毎年この時期に行っている1年生の金属管工事の実習についてご紹介したいと思います。
各画像のコメントはフィクションですが、画像は実習の実際の様子を撮影したものです。

12_10_26_01若先生
さあ、今日は金属管工事だよ

学生 
う~ん、なんだか切りにくいな

12_10_26_02大先生
腰に手なんか当てて、真面目にやってるのか

若先生
う~ん、なんかおかしいね

12_10_26_03大先生
オレに見せてみろ

12_10_26_04大先生

学生
先生が見ていない間にサッサッサッ

12_10_26_05学生
バリ取り作業もこのとおりさ

 大先生
 おお
 すごいじゃないか
 やっぱり工具が良くなかったんだな
 君たちはすごいよ
 もっともっと頑張れよ
 君たちなら良い電工になれるぞ

「立上り」と「引下げ」 【工事業界の専門用語その3】

電気の工事現場では、「立上り(たちあがり)」や「引下げ(ひきさげ)」という言葉が使われます。

これは、日本工業規格 JIS C 0303:2000 「構内電気設備の配線用図記号」で定められている図記号の名称で、電気工事士の試験にも出題されます。

それで、つい使ってしまうのが、「引下げ」に対して「引上げ(ひきあげ)」です。
図面上では、上のフロア(階)から下のフロア(階)に配線を下げることを「引下げ」、逆に上げることを「立上り」と呼んでいます。

従って、「引上げ」ではなく、「立上げ」が正しい呼び方なのですが、実際の作業では上から引張り上げることもあり、「引上げ」が間違いとは言えません。

しかし、「立下げ(たちさげ)」?
これは日本語として問題があります。

立つということは、座って下にいる状態から、立ち上がって上方向に向かうことです。
だから、下に向かって立つという日本語は間違いです。

「引下げ」に対して「引上げ(引き上げ)」が用いられるように、「立上り」に対して「立下げ」をときどき現場で耳にしますが、これは明らかに間違いです。

現場には老練な物知りで厳しい大先輩もいます。
現場で叱られることが少しでも減るように、しっかりと正しい言葉を覚えましょう。

但し、先輩の皆さんから叱られることを恐れてはいけません。
叱られるということは、それだけ叱ることで成長すると期待されているのですから。