一般用電気工作物【初学者の電気法規1】

電気工作物は一般用電気工作物と事業用電気工作物に分けられます。

電気工事士には一般用電気工作物の設置と変更が認められています。
今は第一種と第二種に分けられている電気工事士ですが、これは今も昔も変わっていません。
電気工事の欠陥による災害の発生を防止するために、電気工事士制度は作られました。
制度が作られたのは戦争が終わってから15年目で50年以上前になります。
当時の電気工事の多くは個人の住居や、個人経営の店舗などでした。
そうした電気工事の対象は、一般用電気工作物に区分される電気工作物でした。

一般用電気工作物とは外部から低圧の電気をもらって、その中だけで電気を使用する電気設備です。
当時発電設備を持っているのは一部の企業だけでした。
発電設備があれば一般用電気工作物ではなく事業用電気工作物に区分されていました。
しかし現在は、一般用電気工作物でも太陽光発電設備などの小出力発電設備の設置が認められるようになっています。

電気工事に関する法律はいろいろありますが、全体をまとめて電気法規と呼んでいます。
電気工事士は電気法規を守って仕事をします。
科学技術の発展に伴い、新しい技術を身に着けていくとともに、改正される法律も勉強し続けていくのが電気工事士の仕事です。

第一種電気工事士【電気系資格その2】

第一種電気工事士資格は昭和63年の電気工事士法改正により誕生しました。
一般用電気工作物の設置や変更作業が認められていた改正前の電気工事士資格は、第二種電気工事士資格に改正されました。
そして、第一種電気工事士には最大電力500kW未満の自家用電気工作物の作業も認められるようになり、一部の限定された高圧電気設備の作業もできるようになりました。
それまでは、自家用電気工作物を管理する電気主任技術者の監督の指示で動いていた電気工事士が、第一種電気工事士の資格を取得することで、仕事の幅を広げられるようになったのです。

第一種電気工事士も第二種電気工事士も、誰でも国家試験を受験することができます。
第二種電気工事士免状は、試験に合格するか、この学校のような養成施設を修了すれば、すぐに取得できます。
しかし、第一種電気工事士免状は、最低3年以上の実務経験がなければ取得できません。
その上、免状取得後は5年ごとに定期講習を受講しなければいけません。

第一種電気工事士誕生の背景として、昭和60年代初めに、わりと規模の小さい中小ビルや工場の自家用電気工作物で、電気工事の不備による事故が増加したため、自家用電気工作物の工事段階における保安の強化が求めれたことがあります。
従って、第一種電気工事士に対しては、電気工事に関する技術や保安規制に関する知識を常に更新していくことが求められ、社会の重要なインフラである電気設備の安全を守ると共に、作業者である自分自身の安全を守ることが義務付けられているといえます。

電気電子学科では、在学中に第一種電気工事士試験に合格し、卒業後に実務経験を積むことで免状が取得できるように受験指導をしています。

イッテコイ 【工事業界の専門用語その4】

「イッテコイ」は工事現場に限らず、舞台や映像コンテンツの制作現場や、証券取引業界などでも、同じ意味で用いられています。

配線工事では設計図などの設計の指示に従って、現場作業で必要な長さを計算してケーブルの準備をします。
配線をする区間の長さに、作業で加工する部分の長さと、ある程度のリスクを考慮した長さを加えた長さのケーブルを準備します。
必要な長さに切断をした短めのケーブルを現場に持ってくることもありますが、50メートル巻きや100メートル巻きのケーブルを持ってきて現場で切断することもあります。

「イッテコイ」は現場で長さを確認することに使われます。
例えば、入口から奥の壁まで直線で15メートルの部屋があったときに、入口から配線を開始して、奥の壁で折り返して、また元の入口まで戻って来る配線をするときに、「行って、来いで、30メートル」という表現をします。

ある位置から一定の地点まで移動して、始めの位置まで戻って来ることを「イッテコイ」と言っているのです。

第二種電気工事士【電気系資格その1】

第二種電気工事士は、電気工事に必要な基礎知識があることを証明する国家資格です。
国家資格ですから、年に2回行われる国家試験を受けて、免状を取得するのが一般的です。

電気電子学科の2年間の授業は、第二種電気工事士に必要な知識と技能を学べるものになっています。
これは経済産業省にも認められており、卒業時には「養成施設修了証明書」を発行します。
国家試験の「試験合格通知書」の代わりに、この証明書で第二種電気工事士免状が入手できます。

電気工事をするのに国家資格が必要な理由は、重要な社会インフラに関係する仕事だからです。
国家試験の筆記試験では、電気工事士が必要な知識の中から50問が出題され、30問以上の正解で合格です。
技能試験では13種類の候補問題が公表され、その中から試験当日に指定される1種類を作ります。

この学校の実習では、リングスリーブや差込型コネクタを使用しない電線の接続法から、現場で必要とされる電線管の加工などを実際に行い、現場で使える電気工事士を養成しています。
知識についても、上位資格の第二種電気主任技術者(電験二種)レベルで授業を行っています。

免状取得はゴールではなく、スタートラインと言われています。
この学校で電気工事士として身に着けなければいけない知識と技能を身に着けて、
自信を持って就職してくれることを願っています。

修学旅行隊が研修にやってきた

夏休みが終わって最初の1年生の電気工事実習の授業に、
中学3年生の修学旅行隊の皆さんが研修で来てくれました。

中学校の理科でも電流について学びますが、
電気電子学科では、中学校で学ぶ電流について更に詳しく学習し、
発電所から送電設備、配電設備を流れてくる電流を、
建物の中で安全に使うための工事や管理の勉強をします。

卒業時に電気工事士や電験認定資格が取れるので、
ビル内にある配電制御システムの工事や、
配電制御システムの管理関係の仕事をしている卒業生が多いですが、
配電盤、分電盤、制御盤を作る仕事をしている卒業生もいます。

これが電気の世界ですが、
携帯電話やスマホを動かしているのも電気です。
電子回路や電気通信関係の科目もあるので、
この学校を卒業してから大学に編入学をして、
大学院の修士課程を修了して、
半導体メーカーで活躍している卒業生もいます。

そういう将来のために大切なのが、
小学校や中学校で勉強する基礎学力です。

いろいろなことに興味を持って勉強し、
自分自身にあった進路選択をしてくれることを願っています。

ご安全に!

 3月に卒業して4月から都内で新入社員研修を受講していた卒業生が、挨拶のため先日教員室を訪ねて来てくれました。
これまでの都内での合同研修を終え、仮配属地である千葉県の火力発電所へ行くとのことでした。

職場での挨拶言葉

「ご安全に!」

がまだピンと来ないということでした。

どの企業でも「ハイオアシス」など挨拶の励行に関する研修が行われ、挨拶言葉などから始まって徐々にその業界、企業に馴染んでいくのでしょう。

一般企業であれば、朝なら「おはようございます!」、昼間なら「こんにちは!」。
テレビ局はいつでも「おはようごいます!」のようですが・・・

電気電子学科を卒業して大きな設備を管理する工場などに勤務する場合の挨拶は「ご安全に!」です。

 4月はそういう業界を目指した新入生40名が入学してきました。

入学式ロビーS

場内s

 卒業式と同じく、読売理工医療福祉専門学校の入学式は、学校法人読売理工学院が運営する専門学校読売自動車大学校と一緒に開催されます。
両校の学生は球技大会の各競技で優勝を目指して競い合うことになる仲間たちです。

 今年電気電子学科に入学した学生の生まれ故郷は北海道から沖縄まで日本全国。そして留学生の出身国は中国、タイ、ベトナム、ミクロネシア、ポーランド、セネガル。
今年も世界各地から読売理工専で電気を学ぶために学生が集まってくれました。

 朝早くに起きて新聞配達をしてから登校している学生も4名います。

 4月は教員の私を含め、新入生の皆さんは1週間の時間割に慣れるための期間だったような気がします。
それでも、連休開始直前の4月24日には全員登校してくれました。
そういったちょっとしたことでも嬉しいのが教員という職業です。

ゴールデンウイークが終わると、徐々に加速度的に学ぶ内容が難しくなってきます。

それでも、初心を忘れずに簡単にあきらめることなく、遅刻せず、休まず、友達に会うのが楽しみという理由でも良いから学校に通って、来年の春まで学び続け全員で2年生に進級して欲しいと願っています。

(掲載の画像は読売自動車大学校からお借り致しました)

「立上り」と「引下げ」 【工事業界の専門用語その3】

電気の工事現場では、「立上り(たちあがり)」や「引下げ(ひきさげ)」という言葉が使われます。

これは、日本工業規格 JIS C 0303:2000 「構内電気設備の配線用図記号」で定められている図記号の名称で、電気工事士の試験にも出題されます。

それで、つい使ってしまうのが、「引下げ」に対して「引上げ(ひきあげ)」です。
図面上では、上のフロア(階)から下のフロア(階)に配線を下げることを「引下げ」、逆に上げることを「立上り」と呼んでいます。

従って、「引上げ」ではなく、「立上げ」が正しい呼び方なのですが、実際の作業では上から引張り上げることもあり、「引上げ」が間違いとは言えません。

しかし、「立下げ(たちさげ)」?
これは日本語として問題があります。

立つということは、座って下にいる状態から、立ち上がって上方向に向かうことです。
だから、下に向かって立つという日本語は間違いです。

「引下げ」に対して「引上げ(引き上げ)」が用いられるように、「立上り」に対して「立下げ」をときどき現場で耳にしますが、これは明らかに間違いです。

現場には老練な物知りで厳しい大先輩もいます。
現場で叱られることが少しでも減るように、しっかりと正しい言葉を覚えましょう。

但し、先輩の皆さんから叱られることを恐れてはいけません。
叱られるということは、それだけ叱ることで成長すると期待されているのですから。

サラカン、タケカン、クダカン 【工事業界の専門用語その2】

電気工事実習では、卒業時に養成課程の修了が認められる「第二種電気工事士」のレベルを超える内容も勉強しています。

電気工事系科目の講義でも、「第二種電気工事士」が知らなければならない知識に加えて、卒業後に電気工事の現場に出ても困らないためのお話しをしています。

前回は、「施工」について書きましたが、新築現場での工事が始まると、現場事務所が工事敷地内に建てられ、その工事仕様や工程の進捗に関する会議が関係者全員を集めて現場事務所で定例的に行われます。

製品の仕様は決まっているものの、どのメーカーの何にするかが具体的に決まっていない場合や、現場での製品の設置場所や寸法の確認、調整にメーカの方が現場事務所で行われる会議に出席することがあります。
現場の会議では、「サラカン」、「タケカン(クダカン)」という言葉が普通に交わされ、メーカーの方は理解に苦しむことが少なくないようです。

電気工事業を営むためには、電気工事士と電気工事施工管理技士の有資格者が原則的に必要です。
電気工事士に第一種と第二種があるように、電気工事施工管理技士には1級と2級があります。

電気工事士は電気工事士法で定められている資格ですが、電気工事施工管理技士は建設業法で定められている資格です。

① 自社の立場は、元請なのか、下請の協力会社なのか?
② 元請の場合、協力会社に支払う下請負工事代金の総額はいくらなのか?
建設業法では、この2つの観点で、現場に配置すべき技術者を2種類に分かれています。

その2種類の技術者が、「監理技術者」と「主任技術者」です。

1級電気工事施工管理技士は、監理技術者にも主任技術者にもなれます。
2級電気工事施工管理技士は、主任技術者にはなれますが、監理技術者にはなれません。

そこで、配置すべき技術者(監理技術者、主任技術者)や、技術者の資格(電気工事施工管理技士)の話しになったときに出てくるのが、「サラカン」や「タケカン(クダカン)」という言葉です。

いちいち監理技術者というのは面倒なので、「皿(サラ)のついている漢字を使っているカンリ」なので「サラカン」と略して言います。
施工管理の管は「”たけかんむり”の”くだ”という漢字が用いられているカンリ」なので、「タケカン」または「クダカン」と略されます。

建築設計の世界の「設計・監理」という業務もあるのですが、現場事務所の会議で話している人たちは、業務に関する話をしているのか、配置すべき技術者を話しているのか、管理について話しているのかをを理解しあって話しているので、当事者間ではコミュニケーションが成立しているのですが、業界外からの会議出席者にはどうやら意味不明になってしまうようです。

2年間の在学期間で、電気工事士に必要な技能と、工事現場の仕事で必要とされる知識の両方を、しっかりと学んでもらえるように、授業の内容を担当する教員がいつも考え続けています。

この学校の卒業生は、2級電気工事施工管理技士の受験資格においても政令で優遇されていることは、電気工事業界への就職を目指す方にはメリットだと思っています。

「セコウ」と「シコウ」 【工事業界の専門用語その1】

夏休みが終わり、1年生も2年生も授業が始まりました。
2年生の夏休み明けの授業の最初は「工事施工法」。
「こうじ・せこう・ほう」と読みます。

電気の仕事には、前回ご紹介したように多くの法律が関係しています。
11月の2級電気工事施工管理技術検定に向けて、2年生の受験希望者向けの講義も再開しました。
夏休み前に施工管理法を終え、夏休み明けからは法規に取り組んでいます。

そこで目の前に出てくる言葉が「施行」
「せこう」とも読みますし、「しこう」とも読みます。

工事業界では、「施工」と「施行」を区別するため、
「施工」を「せこう」、
「施行」を「しこう」、
と読んでいます。

それでもときどき分電盤の銘板に「○○年○○月○○日、○○○○株式会社 施行」というのを見かけます。
「施行」ではなく、「施工」が実は正解です。

卒業するまでに、しっかりと覚えていただきたいと思っています。

電気工事業という仕事

電気工事士の仕事と言えば電気工事です。
しかし、電気工事「業」を営むことが認められている組織の一員にならなければ、電気工事をすることはできません。
これは、電気工事が社会にとって、安全、安心なものとして適正に行われることを目的としています。

「電気工事士法」
電気工事士法は、電気工事士の資格や義務が明示され、電気工事による災害を防ぐことを目的としています。
電気工事士が取扱う電気設備は「電気工作物」と呼ばれ、電気事業の運営を定める「電気事業法」と関連があります。

「電気工事業法」
正式な名前は「電気工事業の業務の適性化に関する法律」と言います。
この法律は、電気工事業者の登録などと、業務の規制について書かれており、電気工作物の保安の確保を目的としています。

「建設業法」
現在、建設工事は28種類あります。電気工事も建設業のひとつです。
建設業法では、建設業者の資質の向上や、建設工事の適正な施工について定められ、建設業に関係する発注者や下請負業者の保護も目的としています。

電気工事の仕事に就くためには、災害事故を起こさずに電気工事ができるだけではなく、社会で暮らす人々が電気を安心して使うことができる設備を作り、お客様や一緒に働く仲間と一緒に業界を発展させることが大切とされています。

だから、電気工事屋さんの入口には「電気工事業」に関する掲示が2枚あります。
① 登録電気工事業者登録票 (電気工事業法に基づく)
② 建設業の許可票 (建設業法に基づく)

こういった法律や、工事屋さんの入口にある掲示の話だけでは「電気工事業」をイメージするのは難しいと思います。
しかし、社会で暮らす人々が何も気にすることなく、当たり前に電気を使えることを支えているのが「電気工事業」という仕事であることが分かってもらえれば嬉しいです。