電気主任技術者【電気系資格その6】

denken電気主任技術者とは事業用電気工作物の保安監督のために配置することが電気事業法で定められています。
事業用電気工作物とは、発電所、送配電設備、受電設備などのことです。

「〇〇業法」というのは、その事業に対して必要な規制を行い、その事業のお客様を保護するのが一般的です。
しかし、電気事業法は受電設備の所有者であるお客様に対しても、電気主任技術者の選任を義務付けています。
つまり、電気事業法では事業者とお客様が一体となって、全ての電気工作物の保安を確保しているといえます。

電気主任技術者資格には第一種、第二種、第三種があり、その技術レベルに応じて、対応可能な設備(電気工作物)の規模が定められています。

第三種電気主任技術者(電験第三種)には、出力5,000kW以上の発電所を除く、電圧50,000V未満の事業用電気工作物の工事、維持および運用の保安監督が認められています。

第二種電気主任技術者(電験第二種)には、電圧170,000V未満の事業用電気工作物の工事、維持および運用の保安監督が認められています。

第一種電気主任技術者(電験第一種)には、全ての事業用電気工作物の工事、維持および運用の保安監督が認められています。

これらの他、第一種電気工事士には許可主任技術者として、常駐地の最大電力が500kW未満の自家用電気工作物の工事、維持および運用の保安監督が許可される制度があります。

一般用電気工作物【初学者の電気法規1】
http://blog.livedoor.jp/yomiuri_denki/archives/52299049.html

自家用電気工作物【初学者の電気法規2】
http://blog.livedoor.jp/yomiuri_denki/archives/52299097.html

許可主任技術者【電気系資格その4】
http://blog.livedoor.jp/yomiuri_denki/archives/52299448.html

電気工作物の保安【初学者の電気法規4】

790480df8ff7648f752ddc2be354cb51_s電気事業法など、電気法規の目的は電気工作物の保安の確保です。
全国の発電所から一般家庭までを送電線や配電線で接続しているということは、全国がひとつの電気回路になっているということです。
実際は地域ごとに分かれている電源周波数50ヘルツまたは60ヘルツの交流回路が、同じ周波数の交流または直流で接続された、複数の交流回路で構成される大きな電気回路です。
従って、どこか一ヶ所で大きな事故が発生した場合には、多大な影響を与える可能性は否定できないのです。

一ヶ所で発生した電気工作物の事故が原因となって、広範囲の停電が発生しないように、様々な対策が多くの場所で行われていますが、電気事故が発生しないように、それぞれの責任範囲で安全状態を確保するために管理を行うことが重要です。
これが電気工作物の保安を確保するための管理です。

一般用電気工作物と、最大電力500キロワット未満の自家用電気工作物は、電気工事士制度によって電気工事の欠陥による災害発生の防止を行い、電気工作物の保安を確保しています。

電気工事士の工事が認められていない電気工作物は、電気主任技術者が電気法規や保安規程などに従って管理を行い、保安を確保しています。
事業用電気工作物の保安監督業務は、規模と業務の種別によって、許可主任技術者、ダム水路主任技術者、ボイラー・タービン主任技術者にも認めて、保安管理体制を維持するようにしているのです。

許可主任技術者【電気系資格その4】
http://blog.livedoor.jp/yomiuri_denki/archives/52299448.html

うわば、したば 【工事業界の専門用語その5】

_ABC0281_s「上端」と書いて「うわば」、「下端」と書いて「したば」と読みます。

日常生活では「じょうたん」や「げたん」と読んでも間違いではありませんが、
工事の現場では「うわば」や「したば」と読みます。

電気設備工事の場合には、壁面に設置されている盤や、器具などの上端の高さを指して、「うわば」と説明をしたりしています。

設備設計者との打ち合わせのときには、「上端(うわば)」の他に、同じ意味で「天端(てんば)」が使われることもあります。

電気工事士の将来【電気系資格その5】

denki1第一種電気工事士は2年後の2020年には、高齢者層の退職により約18,000人が不足する見込みです。
更にその25年後、2045年には電気工事完工高の減少を考慮しても、想定需要約165,000人に対して24,000人が不足するという現状分析が経済産業省の電力安全小委員会で報告されています。

第一種電気工事士の有資格者は、50歳以上が全体の60%を占め、そのうち50代だけで全体の36%です。
昭和63年の電気工事士法改正のときに、旧制度の電気工事士から第一種電気工事士に移行した、当時26歳前後の有資格者が多くなっています。

この第一種電気工事士の不足を補うことになると想定されているのが、認定電気工事従事者です。

第二種電気工事士には大量退職はありませんが、少子化などによって電気工事業界への就職者(入職者)が減るため、2020年には6,000人が不足、2045年には想定需要約88,000人に対して2,500人が不足する見込みです。

しかし、第二種電気工事士は認定電気工事従事者として第一種電気工事士の不足を補うことになるので、一般電気工作物の工事を行う第二種電気工事士の不足は更に拡大することが想定されています。

電気工事士全体としては、2020年には24,000人、2045年には26,500人に不足数は拡大していきます。

AIやロボットによって作業の効率化は進んでいくことが考えられますが、図面から作業内容を判断して、身に着けた技能を発揮する場で働く電気工事士は年々不足していきます。
AIによって多くの仕事が無くなると言われていますが、電気工事士はこれから益々必要とされていくと言えるでしょう。

低圧と高圧【初学者の電気法規3】

denki2低圧で受電をするのは一般用電気工作物、高圧で受電すると自家用電気工作物。

低圧と高圧の電圧についても電気法規で定められています。
スマホの充電などで、いつもコンセントに接続することで使っている、交流電源は次のとおりです。

低 圧:交流600V 以下のもの 
高 圧:交流600V をこえ7,000V 以下のもの

電柱の一番上を走っている3本の電線が6,600Vの高圧、その下の電線が200Vと100Vの低圧というのが一般的です。
電柱の一番上の電線と、下の電線の間には、変圧器が固定されていて、6,600Vの高圧を、200Vや100Vの低圧に変圧しています。
一軒家の住宅や、住宅付店舗では、電柱の変圧器で低圧にした電力をそのまま使っています。

ビルやマンションの自家用電気工作物の場合は、直接6,600Vなどの高圧で受電して、建物内や敷地内に設置している変電設備(変圧器)で200Vや100Vの低圧に変圧して使っているのです。

よびせん 【工事業界の専門用語その4】

「よびせん」は「呼び線」と書きます。
「予備線」ではなく「呼び線」、「呼び線そう入器」の「呼び線」です。

新築工事などで建物の壁の中に電線用配管を埋めるとき、配管工事の担当業者さんから「よびせんはどうしますか?」と尋ねられることがあります。
尋ねて下さる業者さんは良心的なほうで、配管のお願いをするときに一緒にお願いをするのが常識ともいえます。

呼び線の片側へ配線(通線)する電線を固定して、固定した逆側の配管出口から呼び線を引っ張ることで、引っ張る方向へ電線を呼ぶことができます。
だから「呼び線」です。

配管はCD管を使うことが多く、コンクリート打設前に配管をきちんと固定しますが、OA床(フリーアクセスフロア)の床パネル下の有効スペースなどに横方向から出てくる場合に、何らかの原因によりコンクリート打設後に移動してしまうこともあります。
そのときには配管配線図面を参考に、逆側から呼び線を出し入れしてみることで、探してみるという方法もあるので、呼び線は入れておくのが良いと思います。
ある新築工事では、配管出口が10メートル程度移動していたこともありました。

呼び線を入れる作業からすれば、後から配線(通線)する電線用の予備として入れる線なので「予備線」と言いたい気持ちは理解できますが、「予備線」ではなく「呼び線」が正解です。

現場を経験せずに第二種電気工事士の勉強をしたときに、「呼び線そう入器」の写真を見ただけでは使い方が想像できないかもしれませんが、呼び線の入っていない配管の場合には、呼び線そう入器のスチールを回転させながら配管に入れて行き、配管の逆側に出たら電線を固定して、巻き戻しながら配管に入れたスチールを手前に引くことで、配線(通線)作業を行います。

許可主任技術者【電気系資格その4】

許可主任技術者とは申請により許可された場合に、電気工事士免状取得者が特定の自家用電気工作物の電気主任技術者になることです。

特定の自家用電気工作物に限られる理由は、選任許可申請をする電気工事士免状取得者が、許可を受ける自家用電気工作物があるビルや構内に常駐していなければならないからです。

第一種電気工事士免状取得者は最大電力が500kW未満の自家用電気工作物、第二種電気工事士免状取得者は最大電力が100kW未満の自家用電気工作物の、許可主任技術者として選任許可申請をすることができます。

電気室の配置【現場のなぜ?その1】

電気室が浸水したというニュースがありました。

一般的に「キュービクル」と呼ばれる、キュービクル型受変電装置は屋上などに設置され、浸水することは普通考えられないのですが、なぜ電気室は浸水するのでしょうか。

建物の規模にもよりますが、受電条件や、建物内への配電系統、接続されるその他の設備などの制約条件により、キュービクルに簡素化して収容されている機器では対応が難しいときには、建物内に電気室を作って、電気室内に受電設備機器や、配電するために電圧を下げる変電設備機器などを個別に設置して、電力会社から供給される電力を建物内(構内)で使用できるようにします。

電気室を配置するときに考慮するのは次の点です。
①電力会社から引き込むことが容易なこと
②電気室に設置する機器の搬出入が可能なこと
③電気室に設置する機器の保守スペースや拡張スペースを確保すること
④電気室に設置する機器の重量に床の耐荷重が耐えられること
⑤接続されるその他の設備(非常用発電機や空調設備など)に近いこと

⑤の非常用発電機や空調設備なども、②~④は一緒のため、これらの電気室や発電機室、空調機械室などは地下に隣接して作られることが多いのですが、現在では洪水などによる浸水対策を講じることが一般的となっています。
しかし残念なことに、配置計画や設計段階で想定できない洪水になったときには浸水してしまっているというのが現実のようです。

認定電気工事従事者【電気系資格その3】

認定電気工事従事者とは第一種電気工事士でなくても自家用電気工作物の簡易電気工事作業に従事ができるという資格です。
具体的には、最大電力500kW未満の需要設備(「自家用電気工作物」という)のうち、電圧600V以下で使用する電気工作物の工事(電線路に係るものを除く)が認められています。

次の3者は申請のみで認定証を取得することができます。
①第一種電気工事士試験合格者
②第二種電気工事士免状取得後、電気に関する工事の実務経験が3年以上ある者
③電気主任技術者免状取得後、電気工作物の工事、維持もしくは運用に関する実務経験が3年以上ある者

第二種電気工事士の資格を取得して就職したときに現実的に問題となるのが、お客様の現場は自家用電気工作物なのに、第二種電気工事士は一般用電気工作物しか工事が許可されていないということです。

そのため、次の2者は電気工事技術講習センターが実施する「認定電気工事従事者認定講習」を受講し、その講習修了証等を添えて申請することで、認定証を取得することができるようになっています。
①第二種電気工事士免状の交付を受けた者
②電気主任技術者免状の交付を受けた者

認定電気工事従事者の認定証取得は、電気工事士免状取得者以外に、電気主任技術者免状取得者にも認めれています。

取得方法が似ているものに特種電気工事資格者があります。

特種電気工事資格者でなければ、ネオン工事と非常用予備発電装置工事(自家用電気工作物の保安上支障がないと認められる作業であつて、経済産業省令で定めるものを除く。)に従事できません。

ネオン工事の特種電気工事資格者も、非常用予備発電装置工事の特種電気工事資格者も、認定講習の受講と5年以上の工事の実務経験が必要です。
特種電気工事資格者認定講習の受講資格は、電気工事士免状取得者のみです。

自家用電気工作物【初学者の電気法規2】

自家用電気工作物とは、電気事業用の電気工作物以外の事業用電気工作物です。
一般用電気工作物は、電気事業用の電気工作物から、低圧で受電しています。
自家用電気工作物は、電気事業用の電気工作物から、高圧や特別高圧で受電しています。

一般用電気工作物、自家用電気工作物、電気事業用の電気工作物と区分されていますが、
全ての電気工作物は変電設備や送電線、配電線でつながっています。

自家用電気工作物の設置者は、保安規程を作成して、電気主任技術者を選任し、電気の保安を確保することが法律で義務付けられています。
この電気主任技術者に選任される前提となる国家資格が、電験と呼ばれている電気主任技術者試験の合格者です。

電気主任技術者の資格は、第一種、第二種、第三種に分かれており、その種別によって電気法規で許可されている電気工作物の規模が異なります。

電気主任技術者は電気工事士と共に、電気法規に従って電気工作物の安全に責任を持つ仕事です。