うわば、したば 【工事業界の専門用語その5】

_ABC0281_s「上端」と書いて「うわば」、「下端」と書いて「したば」と読みます。

日常生活では「じょうたん」や「げたん」と読んでも間違いではありませんが、
工事の現場では「うわば」や「したば」と読みます。

電気設備工事の場合には、壁面に設置されている盤や、器具などの上端の高さを指して、「うわば」と説明をしたりしています。

設備設計者との打ち合わせのときには、「上端(うわば)」の他に、同じ意味で「天端(てんば)」が使われることもあります。

電気工事士の将来【電気系資格その5】

denki1第一種電気工事士は2年後の2020年には、高齢者層の退職により約18,000人が不足する見込みです。
更にその25年後、2045年には電気工事完工高の減少を考慮しても、想定需要約165,000人に対して24,000人が不足するという現状分析が経済産業省の電力安全小委員会で報告されています。

第一種電気工事士の有資格者は、50歳以上が全体の60%を占め、そのうち50代だけで全体の36%です。
昭和63年の電気工事士法改正のときに、旧制度の電気工事士から第一種電気工事士に移行した、当時26歳前後の有資格者が多くなっています。

この第一種電気工事士の不足を補うことになると想定されているのが、認定電気工事従事者です。

第二種電気工事士には大量退職はありませんが、少子化などによって電気工事業界への就職者(入職者)が減るため、2020年には6,000人が不足、2045年には想定需要約88,000人に対して2,500人が不足する見込みです。

しかし、第二種電気工事士は認定電気工事従事者として第一種電気工事士の不足を補うことになるので、一般電気工作物の工事を行う第二種電気工事士の不足は更に拡大することが想定されています。

電気工事士全体としては、2020年には24,000人、2045年には26,500人に不足数は拡大していきます。

AIやロボットによって作業の効率化は進んでいくことが考えられますが、図面から作業内容を判断して、身に着けた技能を発揮する場で働く電気工事士は年々不足していきます。
AIによって多くの仕事が無くなると言われていますが、電気工事士はこれから益々必要とされていくと言えるでしょう。

低圧と高圧【初学者の電気法規3】

denki2低圧で受電をするのは一般用電気工作物、高圧で受電すると自家用電気工作物。

低圧と高圧の電圧についても電気法規で定められています。
スマホの充電などで、いつもコンセントに接続することで使っている、交流電源は次のとおりです。

低 圧:交流600V 以下のもの 
高 圧:交流600V をこえ7,000V 以下のもの

電柱の一番上を走っている3本の電線が6,600Vの高圧、その下の電線が200Vと100Vの低圧というのが一般的です。
電柱の一番上の電線と、下の電線の間には、変圧器が固定されていて、6,600Vの高圧を、200Vや100Vの低圧に変圧しています。
一軒家の住宅や、住宅付店舗では、電柱の変圧器で低圧にした電力をそのまま使っています。

ビルやマンションの自家用電気工作物の場合は、直接6,600Vなどの高圧で受電して、建物内や敷地内に設置している変電設備(変圧器)で200Vや100Vの低圧に変圧して使っているのです。

後から来る塩害【現場のなぜ?その3】

electricalworker台風24号が通過したのは9月30日から10月1日まででしたが、塩害による電柱や電線から火花が出たという報告は翌日の2日の夜からでした。

台風の強風によって海水が運ばれて付着した塩分が、電解質として霧や小雨に溶けることにより、通常より導電率が高くなった水分の中を漏れ電流が流れます。
導電率が高くなるということは、電気抵抗が低くなることなので、いつもの霧や小雨よりも電流を流しやすくなります。

電気抵抗に電流が流れると発熱し、その熱によって水分は蒸発し乾燥します。
その乾燥した部分の両端の水分には高電圧がかかったままなので、この乾燥部分で火花放電が発生すると考えられています。

火花放電が発生する条件として、霧や小雨といった少量の水分と、その水分を蒸発、乾燥させる時間が必要になります。
そのため、電気設備の塩害による影響は後から出てくるのです。

気象庁のデータによると、宮崎では9月30日16時に0.5mmの降水量記録を最後に雨は止みました。
その後は10月3日の21時に0.5mm未満の降水量が記録され、10月4日の朝6時まで降水量が記録されています。
宮崎ではその後も断続的に雨が降り、4日18時頃から1時間20分程度、JR日豊線と宮崎空港線の一部区間で大規模停電による運行トラブルが発生しました。

千葉では10月1日3時に0.5mmの降水量を記録した後に雨は止み、10月4日13時の0.5mm未満の記録から断続的に降水量が記録され始めています。
翌朝の5日7時45分頃には千葉市の京成線西登戸駅で停電が発生。京成電鉄では9時半までに他の駅3か所でも電線からの火花を確認したため、19時50分頃まで全線で運転を見合わせ、電気設備の点検を行いました。

降水量の記録開始から、実影響までの時間差から考えると、10月2日に電柱や電線から火花が出たのは、前日まで続いた台風による大雨の水分による影響の可能性が疑われます。

塩害停電対策【現場のなぜ?その2】
http://blog.livedoor.jp/yomiuri_denki/preview/edit/24200138265d80c9dfe6795a5c4a1206

よびせん 【工事業界の専門用語その4】

「よびせん」は「呼び線」と書きます。
「予備線」ではなく「呼び線」、「呼び線そう入器」の「呼び線」です。

新築工事などで建物の壁の中に電線用配管を埋めるとき、配管工事の担当業者さんから「よびせんはどうしますか?」と尋ねられることがあります。
尋ねて下さる業者さんは良心的なほうで、配管のお願いをするときに一緒にお願いをするのが常識ともいえます。

呼び線の片側へ配線(通線)する電線を固定して、固定した逆側の配管出口から呼び線を引っ張ることで、引っ張る方向へ電線を呼ぶことができます。
だから「呼び線」です。

配管はCD管を使うことが多く、コンクリート打設前に配管をきちんと固定しますが、OA床(フリーアクセスフロア)の床パネル下の有効スペースなどに横方向から出てくる場合に、何らかの原因によりコンクリート打設後に移動してしまうこともあります。
そのときには配管配線図面を参考に、逆側から呼び線を出し入れしてみることで、探してみるという方法もあるので、呼び線は入れておくのが良いと思います。
ある新築工事では、配管出口が10メートル程度移動していたこともありました。

呼び線を入れる作業からすれば、後から配線(通線)する電線用の予備として入れる線なので「予備線」と言いたい気持ちは理解できますが、「予備線」ではなく「呼び線」が正解です。

現場を経験せずに第二種電気工事士の勉強をしたときに、「呼び線そう入器」の写真を見ただけでは使い方が想像できないかもしれませんが、呼び線の入っていない配管の場合には、呼び線そう入器のスチールを回転させながら配管に入れて行き、配管の逆側に出たら電線を固定して、巻き戻しながら配管に入れたスチールを手前に引くことで、配線(通線)作業を行います。

許可主任技術者【電気系資格その4】

許可主任技術者とは申請により許可された場合に、電気工事士免状取得者が特定の自家用電気工作物の電気主任技術者になることです。

特定の自家用電気工作物に限られる理由は、選任許可申請をする電気工事士免状取得者が、許可を受ける自家用電気工作物があるビルや構内に常駐していなければならないからです。

第一種電気工事士免状取得者は最大電力が500kW未満の自家用電気工作物、第二種電気工事士免状取得者は最大電力が100kW未満の自家用電気工作物の、許可主任技術者として選任許可申請をすることができます。

塩害停電対策【現場のなぜ?その2】

送配電線路(送電線・配電線の設備)や屋外変電所の碍子(がいし)に付着した塩分が霧や小雨に溶けることにより、その塩分を含んだ水を流れる漏れ電流が塩害発生の原因と考えられています。
塩分を含んだ水の電気抵抗は、一般的な雨水や水道水の100分の1程度になります。
電気抵抗が小さくなれば、碍子表面の漏れ電流は流れやすくなり、電流の増加によって発熱量は増加します。
その発熱によって碍子表面が乾燥し、部分放電が発生したり、フラッシオーバーに移行することによって事故が発生し、停電を引き起こします。

空気中の塩分量は風速の2乗で増加するという研究結果もあり、風速10m/s以上の海風が吹くときには、沿岸部の各種構造物などへの塩分付着量が急増するとされています。

それでは、なぜ沿岸部では塩害による停電が少ないのでしょうか。
それは、塩害の発生が考えられるところでは、塩害対策が既に講じられているからです。

塩分付着量は海岸から離れるに従って減少するという分析結果があり、停電事故を防止できる最適な碍子の選定と配置を電力会社は進めているのです。

今回の平成30年台風24号では関東地方でも非常に強い風が吹き、最大風速と最大瞬間風速の観測史上1位の値を更新した地点が複数あります。
台風通過前に太平洋から吹き込んだ強い南風は、これまで塩害対策を施す必要がなかった海岸から離れた地域まで、大量の塩分を運んで塩害発生に至る量の塩分付着を引き起こしたようです。

塩害対策については、第二種電気主任技術者試験(電験第二種)では2006年度、第三種電気主任技術者試験(電験第三種)では2008年度や2015年度などに出題されています。

電気室の配置【現場のなぜ?その1】

電気室が浸水したというニュースがありました。

一般的に「キュービクル」と呼ばれる、キュービクル型受変電装置は屋上などに設置され、浸水することは普通考えられないのですが、なぜ電気室は浸水するのでしょうか。

建物の規模にもよりますが、受電条件や、建物内への配電系統、接続されるその他の設備などの制約条件により、キュービクルに簡素化して収容されている機器では対応が難しいときには、建物内に電気室を作って、電気室内に受電設備機器や、配電するために電圧を下げる変電設備機器などを個別に設置して、電力会社から供給される電力を建物内(構内)で使用できるようにします。

電気室を配置するときに考慮するのは次の点です。
①電力会社から引き込むことが容易なこと
②電気室に設置する機器の搬出入が可能なこと
③電気室に設置する機器の保守スペースや拡張スペースを確保すること
④電気室に設置する機器の重量に床の耐荷重が耐えられること
⑤接続されるその他の設備(非常用発電機や空調設備など)に近いこと

⑤の非常用発電機や空調設備なども、②~④は一緒のため、これらの電気室や発電機室、空調機械室などは地下に隣接して作られることが多いのですが、現在では洪水などによる浸水対策を講じることが一般的となっています。
しかし残念なことに、配置計画や設計段階で想定できない洪水になったときには浸水してしまっているというのが現実のようです。

認定電気工事従事者【電気系資格その3】

認定電気工事従事者とは第一種電気工事士でなくても自家用電気工作物の簡易電気工事作業に従事ができるという資格です。
具体的には、最大電力500kW未満の需要設備(「自家用電気工作物」という)のうち、電圧600V以下で使用する電気工作物の工事(電線路に係るものを除く)が認められています。

次の3者は申請のみで認定証を取得することができます。
①第一種電気工事士試験合格者
②第二種電気工事士免状取得後、電気に関する工事の実務経験が3年以上ある者
③電気主任技術者免状取得後、電気工作物の工事、維持もしくは運用に関する実務経験が3年以上ある者

第二種電気工事士の資格を取得して就職したときに現実的に問題となるのが、お客様の現場は自家用電気工作物なのに、第二種電気工事士は一般用電気工作物しか工事が許可されていないということです。

そのため、次の2者は電気工事技術講習センターが実施する「認定電気工事従事者認定講習」を受講し、その講習修了証等を添えて申請することで、認定証を取得することができるようになっています。
①第二種電気工事士免状の交付を受けた者
②電気主任技術者免状の交付を受けた者

認定電気工事従事者の認定証取得は、電気工事士免状取得者以外に、電気主任技術者免状取得者にも認めれています。

取得方法が似ているものに特種電気工事資格者があります。

特種電気工事資格者でなければ、ネオン工事と非常用予備発電装置工事(自家用電気工作物の保安上支障がないと認められる作業であつて、経済産業省令で定めるものを除く。)に従事できません。

ネオン工事の特種電気工事資格者も、非常用予備発電装置工事の特種電気工事資格者も、認定講習の受講と5年以上の工事の実務経験が必要です。
特種電気工事資格者認定講習の受講資格は、電気工事士免状取得者のみです。

自家用電気工作物【初学者の電気法規2】

自家用電気工作物とは、電気事業用の電気工作物以外の事業用電気工作物です。
一般用電気工作物は、電気事業用の電気工作物から、低圧で受電しています。
自家用電気工作物は、電気事業用の電気工作物から、高圧や特別高圧で受電しています。

一般用電気工作物、自家用電気工作物、電気事業用の電気工作物と区分されていますが、
全ての電気工作物は変電設備や送電線、配電線でつながっています。

自家用電気工作物の設置者は、保安規程を作成して、電気主任技術者を選任し、電気の保安を確保することが法律で義務付けられています。
この電気主任技術者に選任される前提となる国家資格が、電験と呼ばれている電気主任技術者試験の合格者です。

電気主任技術者の資格は、第一種、第二種、第三種に分かれており、その種別によって電気法規で許可されている電気工作物の規模が異なります。

電気主任技術者は電気工事士と共に、電気法規に従って電気工作物の安全に責任を持つ仕事です。